International Jomon Cultuer Conferrence|縄文土器/土偶/貝塚/勾玉など縄文時代/縄文人の文化を探求する考古学団体 (▼△▼)/

■ 『フランスのおける先史考古学の現状』 五十嵐ジャンヌ


フランスにおける先史考古学の現状

IPH(古人類学研究所)の研究活動を中心に

 フランスの先史考古学は、およそ1世紀半の伝統があり、特に、石器、化石人類や動物遺物、そして洞窟壁画の研究と世界的に知られている。パリに国立自然史博物館付属の、IPH(古人類学研究所)という研究機関があるが、そこのプログラムと成果を中心に先史考古学の現状に触れることにしよう。
 そこでは、フランス各地の古人類学・先史考古学研究所や博物館、大学と提携しており、フランス国内に限らず、世界を舞台に調査研究を進めている。自然科学と人間科学といった異分野間の学際的な協力関係と、アフリカ、南アメリカ、アジア、ヨーロッパ各国との国際協力が特徴である。
 学問領域としては、年代測定方法、花粉分析学、古人類学、考古動物学、石器、先史美術研究などがあり、さらに様々な専門分野が細分化されている。

IPHによる理化学的年代測定
 スペインのアタプエルカ遺跡、中期更新世のホモ・ハイデルベーゲンシスと前期更新世のホモ・アンテセソル
 IPHは、特に地質年代学、地質学、堆積学、酸素同位体比研究、第四紀の花粉分析学、古生化学など、先史考古学の分野で先端的分析方法を発展させたことで、パイオニア的な存在である。
 中でも年代測定は、国際的に多くの実績をあげている。例えば、中期更新世(78から13万年前)人類化石の80%が発見され脚光を浴びているスペインのアタプエルカ遺跡で、年代測定を行っている。この遺跡は一九世紀から知られていたが、組織立てて発掘されたのは、1984年以降である。1990年代、その遺跡の一角から新たに発見されたシマ・デ・ロス・ウエソス(骨の深穴)という場所から30体以上の化石人類が出土した。その年代が測定され、およそ30万年前の中期更新世のホモ・ハイデルベーゲンシスとされた。
 この遺跡は興味深い解釈がなされたので有吊である。例えば、人類化石に見られる石器による切り込みの痕跡から、カニバリズム(人肉嗜食)だとされたり、カルストの深い縦溝に葬られたのは、肉食獣に人間の死肉を与えるためであったとされたり、また反対に化石人類の3000にものぼる断片(少なくとも32体分)とともに貴重な珪石で形の整ったビファース(両面石器)が一つだけ随伴していたので、埋葬儀式の証拠とされたりした。
 一方、アタプエルカ遺跡内で、以前から発掘の対象となっていたグラン・ドリナという場所では、中期更新世よりさらに古い地層から、1994年7月には人類化石(九二にのぼる破片、少なくとも6人分)が発見された。それらは古磁気から年代が推定され、松山逆磁極期とブリュンヌ正磁極期の境界より下層、つまり78万年前のものであった。この地層は、さらに電子スピン共鳴分析法や非破壊ガンマ線によるウラン・トリウム法で年代測定を行った結果、80万年前の前期更新世のものであった。この前期更新世(180~78万年前)の化石人類はホモ・アンテセソルと吊付けられ、ヨーロッパでは最古の化石人類のグループに含まれるものであった。ネアンデルタール人のみの祖先なのか、彼らと現生人類の共通祖先なのか、と様々な論議を巻き起こしている。遅れて登場した方の人類はその場で進化した結果なのか。それとも他の場所からやってきたのか。ヒトの系統図に関心が集まっている。現生人類がその場でホモ・エレクトスから進化したのか(多地域進化説)、あるいはアフリカから世界中に渡ってきたのか(アフリカ単一起原説)を知るには、ヨーロッパに限らず世界各国での前・中期更新世のヒトの文化、移動、そして進化を総合的に知らなければならない。
 次に、IPHの主要研究分野である考古動物学、古人類学、先史学、3つの分野を中心に見ていこう。

ホモ-ハイデルベーゲンシス-左-とホモ-アンテセソル-右

“Reconstruction of an adult individual from SH (Homo heidelbergensis)facing a reconstruction of a juvenile individual form TD6 (Homo antecessor)”Mauricio Antón

古人類学的研究:インドネシアのホモ・エレクトス
 次に、古人類学について触れることにする。IPHは世界中の遺跡の化石人類や複製のコレクションを所有している。
 近年IPHでは、インドネシア、ジャワで地質学者、形質人類学者、考古動物学者らが共同で研究を行っている。
 ジャワのサンギラン・ドーム遺跡の80万年前のカブー層から発見されたグロッゴル・ウェタンといわれるヒトの頭骨は、ホモ・エレクトスの成人女性であり、サンギラン二や一二、トリニールの頭骨と形質的に類似している。同じくカブー層から出土したスンダンブシックの化石人類も型質的にホモ・エレクトスであった。
 また、ジャワのホモ・エレクトスで有吊な化石人骨、ソロ人は動物化石の電子スピン共鳴分析法やウラニウム・トリウム法で27000から53000年前とされたことで、ホモ・エレクトスがホモ・サピエンス・サピエンスと同時期に存在していたことで注目されていた。その後、IPHのチームによって、非破壊ガンマ線によるアルゴン・アルゴン法で化石人骨の頭蓋骨を直接年代測定したところ、中期更新世末という結果を得て、放射性炭素一四による年代測定では5万年以上前となった。
 このように、年代測定にかなりの差があるものの、いずれにしても、これまで考えられていたよりも後までホモ・エレクトスが生き残っていたことを明らかにした。

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