International Jomon Cultuer Conferrence|縄文土器/土偶/貝塚/勾玉など縄文時代/縄文人の文化を探求する考古学団体 (▼△▼)/

■ 第6回国際縄文学協会奨学生 レポート Vol.2 吉田泰幸


Everyday is Like Sunday: 年末年始のフットボールとイングランドの地方都市


 日本での仕事をお休みしてイギリスに来ているので、時間だけはあった学生の頃に戻って毎日が日曜日のよう・・・とはいかず、インターネットのおかげで(あるいは「せいで」)日本での仕事も隙間時間にやろうと思えばできてしまう、というのは果たして生産性とはそもそも何か、と考えざるをえません。

 12月も下旬になるとSISJAC (Sainsbury Institute for the Study of Japanese Arts and Cultures)も年末モードでスタッフが次々に休暇に入りました。イギリス国外で休暇を過ごすスタッフもいましたが、私は年末年始、イギリスに残り、クリスマス当日に無謀にも街中を歩いてみると、いつもの賑やかなノリッチ中心部の店という店が閉まり、人よりも鳩の方が多い光景を目の当たりにし、こちらの人にとってクリスマスは家族と過ごす日なのだ、ということを今更ながら強烈に実感してそそくさとフラットに帰りました。

 クリスマスの翌日はボクシングデーという祝日です。なぜボクシングデーと呼ばれるのかは諸説あるようですが、この日は必ずイングランドのプレミアリーグを含むフットボール(サッカー)各カテゴリーのリーグ戦が一斉に行われます。なぜボクシングデーにわざわざ開催するのかも諸説あるようですが、とにかく昔からそうなっている、以外の答えはないようです。他のヨーロッパ諸国のリーグはウィンターブレイクに入っているにも関わらず、ボクシングデーだけでなく毎日が日曜とは行かずに年末年始も休みなく試合が続くのがイングランドの特徴です。ノリッチにもプロフットボールクラブ(Norwich City Football Club)があり、近年はプレミアリーグと一つ下のディビジョンのリーグを行ったり来たりしているようです。ノリッチ・シティの年末年始は12月19日に何と敵地で古豪マンチェスター・ユナイテッドに2-1で勝利した後、26日のボクシングデーには敵地でのトッテナム戦に臨んだのですが、0-3で大敗してしまいました。そこからなぜか中1日で28日にホームでの試合が組まれており、最下位のアストンヴィラに快勝(2-0)、そして年明け早々2日にホームでの試合があり、サウザンプトンに1-0で勝利、と上々の結果でしたが、フットボールのような肉体的にハードなスポーツで中1日というのはやはりどうかしている日程です。これらを全て、アウェイは近所のパブのテレビで、ホームはスタジアムで観戦した私もどうかしているのかもしれませんが。

 ノリッチ・シティのホームスタジアムは街同様、コンパクトな作りでとても良い雰囲気でした。客層は老若男女満遍なくという感じで、みなそれぞれのペースで思い思いに観戦しているのですが、時々どこかで発生したチャントがさざ波のように広がり一体感が生まれる様子、相手チームのファンたちはアウェイからわざわざやってきているだけあって試合にのめり込み過ぎでやっぱりちょっとおっかない人たちだったことなどは、黄色を基調としたノリッチ・シティのユニフォームと緑の芝生とのコントラストとともに、とても印象的でした。

 過密日程のフットボーラー達にお付き合いする前、12月の14〜16日には、イングランド北部のブラッドフォードという街で開催された学会、Theoretical Archaeology Group、通称TAGに参加してきました。

 学会でブラッドフォードに行くことをSISJACのスタッフに告げると、ほぼ全員が「ブラッドフォードではカレーを食べるべき」と勧めてくれました。揚げた魚と芋に塩か酢だけをふりかけただけの代物が名物のこの国の人たちが言うことを真に受けていいのだろうか、とも思いましたが、別件でロンドンに行った時にお会いした日本人考古学研究者の方も「私も英国人の言うことを疑ったが、ブラッドフォードのカレーは本当に美味しい」とのことで、1日目の夕食からカレーとなりました。結果、とても美味しかったです。ブラッドフォードにはパキスタンからの移民が多く、彼らが経営するパキスタン料理の店では本場の味が楽しめるのです。ブラッドフォードの街は、狭い意味での英国人・イングリッシュの方がマイノリティではないか、と思うぐらい、パキスタン系の方々が多かったです。二日目の朝には、とある店でパキスタン系のスタッフに昨晩のパキスタン料理が素晴らしかったと私が言うと、どこの店か、と聞かれ、店名を伝えると、そこには毎週家族で行くんだ、とのことで、そういう店が美味しいのもうなずけます。

 街を歩くと、もはや廃墟と化してしまった家屋や集合住宅も頻繁に目にしました。パブに入ると、パキスタン系の人はムスリムなのでお酒を飲まないために見かけず、かわりに狭い意味でのイングリッシュだけでしたが、若い人をほとんど見かけませんでした。そのことをノリッチに帰った後にSISJACのスタッフに伝えると、「それも英国の現在の姿の一つで、ある意味いい経験をしたのではないか」と言われました。どうやら、かつては製造業で栄えたイングランドの地方都市がどこも抱える問題のようです。

 さて、TAGは直訳すると理論考古学会ですが、「理論」からイメージされるような抽象的な、あるいは小難しい話ばかりをしているわけではなかったです。ある人によれば、「理論と言っても事実報告ではなくて、程度の意味合いで、新しいこと、議論をしようという会」で、それはこの会の雰囲気をよく言い当てていると思います。全体テーマ「多様性」のもとにいくつものセッションが立てられており、芸術家と共同のプロジェクトの紹介、今の考古学界に若者はどこにいるのかという問い、メンタルヘルスと考古学、考古学を基にしたフィクション作品の分析、考古学における地図を考え直そう等々、日本でも同様の課題はおそらくあるものの、このように何百人もの人が集まり、ある種考古学をメタ視点から見た発表と議論を集中して行う会は日本にはありません。

 私は日本から来たアメリカ人文化人類学者の同僚と共に一般発表のセッションに入り、同僚は縄文時代遺跡公園における復元建物の問題を、私は「To Climb or not to Climb: The Ethics of Burial Mounds as Public History in Japan (登れる古墳、登れない古墳)」と題して、日本の古墳のマネジメントのあり方について、TAGの全体テーマ「多様性」に引きつける形で発表しました。縄文についての発表は、4月と6月にアメリカで行われる学会、夏に京都で行われる世界考古学会議で行う予定です。世界考古学会議、WAC (World Archaeological Congress)は英国における考古学のあり方についての議論から誕生したと言われています。その前に英国で、日本での発表とは異なるテーマ設定・構成などが求められる英語圏ならではの学会で発表を体験できたのは、今後のプラスになると思います。

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