International Jomon Cultuer Conferrence|縄文土器/土偶/貝塚/勾玉など縄文時代/縄文人の文化を探求する考古学団体 (▼△▼)/

■ 大英博物館においての縄文土器展示:大盛況に終わる


ニコル・クーリジ・ルマニエール博士

大英博物館学芸員
セインズベリー日本藝術研究所研究担当所長
国際縄文学協会副会長

 2012年10月4日から2013年1月20日の期間、大英博物館の特別展示室「朝日新聞ディスプレー」にて小規模でありながら重要な展示会「炎と水の器 日本の縄文土器」が開催されました。来場者は111,847人を記録し、過去にこの特別展示室で行われた日本関連の展示の中で最高の来場者数でした。この数は期間中の大英博物館の来館者の7.7%にあたり、1日に平均1,065人が訪れたこととなります。

 展示会では3点の縄文土器が集められました(写真①)。そのうち2点の土器は長岡市立科学博物館より貸し出されたもの、もう1点は大英博物館のコレクションのなかから出展されたものです(写真②)。長岡の土器は中期縄文時代(3000BC)の典型的な火炎と王冠型土器で非常に人を引きつける魅力的な土器の一例です。縄文土器の中でも最も有名なひとつであるこの素晴らしい二つの土器は、日本以外で展示されることは大変稀です。大英博物館コレクションから出展された縄文土器は、前期縄文時代(5000BC)のほぼ完全な円筒形の土器です。この土器は江戸時代に発見され、茶道家のもとにわたり、お茶会のための水差しにつくりかえられました。土器の内側は金箔と漆が塗られており、木製の蓋にはカタツムリを模した取っ手が付けられています。明治時代にシーボルトの手にわたり、その後、シーボルトにより19世紀後半の大英博物館のオーガスタス・ウォラストン・フランクスにその土器は売られました。大英博物館館長のニール・マクレガーは、歴史を語る100のモノ「100のモノが語る世界の歴史」の中で、大英博物館の所蔵品の中から、100のうちの一つとしてこの縄文土器を選びました。100点のなかに縄文の遺物が選ばれたことは大変重要な意味を持つことです。

 今回の展示にあたっては、小林達雄先生からの多大なるご支援をいただき、展示会を開催することが出来ました。また、土器を日本から安全に運搬し、また返還するという大変に重要な任務をしていただいた二人の専門家、新潟県立歴史博物館学芸員の宮尾亨氏、長岡市立科学博物館学芸員の小熊博史氏のご協力がありました。展示会へは長岡市長の森民夫氏にもお忙しい中いらっしゃっていただき、大変光栄でした。また、森市長には展示会のオープニングで奥様と共にテープカットをしていただきました(写真③、④)。イギリスサイドはサイモン・ケイナー博士が滞りなく展示会運営がされるよう、またすべてが正確で最適な展示となるよう指揮を執りました。大英博物館チームは、この展示会開催のために協力し、多くの時間を割いて準備にあたりました。先史ギリシアの陶器の専門家であるアンドリュー・シェイプランド、日本部門の内田ひろみ、つちやのりこ、そしてLaura Purseglove氏、Jon Ould氏、Sonia D’Orsi氏を含む素晴らしいデザイナー達と共にチームを率いました。サイモン・ケイナー博士と國學院大學の谷口康浩教授との講演を含むいくつかの講演会も行われ、そのどれもが満員の観客を迎えました。そんななか、もっとも人気の催しだったと思われるのは、12月8日に行われた山上進氏による津軽三味線と横笛の演奏会でした(写真⑤、⑥)。会場のスティーブンソンレクチャーシアターは満員となり、入場することの出来ない人もいたほどです。今回、山上さんのイギリスでの初めての演奏会を可能にしたのは、おおたのりこさんとご主人のご協力があってのことです。彼女は親切にも縄文土器の破片の形をしたお菓子を参加者たちに持ってきてくれました。この日は、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院のデヴィッドヒューズ博士の民族音楽学と縄文に関する講演で始まりました。その後、山上さんの演奏がありました。そして、谷口教授の縄文についての講演が美しい挿絵と共に行われました。

 今回のこの展示会の重要な目的は、これらの先史時代の土器の目を見張るほどの造形を強調することと、日本の過去そして現在においてアイデンティティを形成するということにおいて陶器が役割もつことを説明することでした。展示では、これらの土器がどのようにして作られ、使われたのか、なぜこれらは高度な装飾が施されているのかについての解説を用意しました。ジェンダーの役割、アイデンティティとしての陶器、半定住生活社会における意味などについて調査されました。さらに19世紀から21世紀にかけての日本における特徴的な独自性と、漫画、美術、音楽などの大衆文化において日本人の創造力に強い影響を与えていることみることで、これら土器の魅力が待つ恒久的な力明らかにしています。

展示会では、縄文時代とその生活についての視覚と文章による情報を特集しました。また、人気の高かった縄目模様(縄文)を直接触ることのできる模型を新潟県立歴史美術館の協力グループと宮尾亨氏より提供していただきました。展示では。島岡達三氏(1919-2007)による縄文文様の陶磁器作品や漫画家の星野之宣氏(1954-)の原画などによって、現代における縄文時代についての考察も行いました(写真⑦)。長岡市のマンホールカバーには縄文土器が描かれており、それは縄文が広く大衆に知られていることを示しました(写真⑧)。そして、星野之宣の原画と山上進氏による横笛の演奏により観客は異空間にいるかのようでした。

 展示会の目的は、一流の展示品を用いて、考古学上の発掘された遺物の可能性と視覚的多様性を展示することと、世界で最も古い陶器の形状に光を当てる事でした。展示会では紀元前5世紀と現代における陶器の重要性と、それらがどれだけの多様なメッセージと独自性を持っているかを示しました。さらに意義深いことには、イギリスと日本とが文化遺産を共有するために協力し合えるということがこの展示会によって示されました。また、考古学のもつ力が現代の文化想像力へ大きな影響を与えるということを示しました。この展示会はこれらの目的を達成するということにおいて、大成功であったと思います。縄文土器は普遍的な魅力という点において他に類がありません。大英博物館での展示の成功ははっきりとそれを示しています。展示の対象を絞り、様々な機関、国と国の協力によって展示会は成功し、縄文時代の持つ力を訪れた人々に届けることが出来ました。

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