書評
水
28
12月
2011
広瀬隆氏は、著書『東京に原発を!』『原子炉時限爆弾』『危険な話 チェルノブイリと日本の運命』などで原発の危険性を訴えてきた作家です。
『福島原発メルトダウン』と題した本書は、東京電力が2011年5月12日に正式にメルトダウンを認めるよりも前に執筆されたものであり、福島原発に限らず日本全体が抱える問題として、地震、放射能、エネルギー問題などの近い未来の予測についても言及しています。
本書には、多くの知られざる真実が述べられており、そもそもの原発の構造、被曝の仕組みから、地震や断層と耐震構造のことなど、読みやすくまとめてあり、「最悪の事態」を食い止める為には、我々が今現実に起こっていること、将来起こってしまう危険性について知らなければならないと呼びかけています。
火
11
10月
2011
『原発はなぜ日本にふさわしくないのか』
著:武田恒泰(小学館)
「原発には愛がない。」という序文の言葉に目を引いた。
原発と愛の組み合わせに違和感を持ったが、読み進めるうちに、なるほど、原発を推進すればするほど、日本人が大切にしてきた歴史や伝統、精神から遠ざかっていくのがよくわかる。この言葉が本の内容すべてを集約している。
著者は、環境問題の専門家であり、明治天皇の玄孫にあたる皇統保守の、竹田恒泰氏。正統保守の立場でありながら、「脱原発」を掲げる彼の言動に、首をかしげる人も多い。なぜなら、日本では、「保守派=核賛成・原発推進、左翼=核反対・脱原発」という形ができあがっているからだ。しかしそれは何の根拠もない固定観念にしばられていると竹田氏は言う。まず核議論と原発問題は切り離して考えることが大切で、地球を守るという広い視点から見ればおのずと答えがでてくる。
震災から半年以上たった今、原発の議論にはいろいろな嘘があることがわかってきたが、本書でも原発・放射能に対してのあらゆる嘘を検証し、その結果なぜ、原発は日本にふさわしくないのかを指摘する。原発という巨大組織の裏には、愛のない格差社会を反映した世界が垣間見える。また、原子力は神の領域を冒す、人間には手におえないものであると言うことだ。
愛がないものは必要がない。平和な時代が戻ってくるためのヒントがここにある。
水
07
9月
2011
原発のウソ 著:小出裕章 (扶桑社新書)
かつて原子力に夢を持ち、研究に足を踏み入れた著者。しかし原子力の危険性を知り、その危険性を40年間訴え続けてきた。そして、その懸念が福島第一原発の事故として現実のものとなった。
本書では、様々な原発の真実が書かれている。原子力発電所から日々大量に生み出されている「低レベル放射性廃棄物」。時と共に腐食するドラム缶に入れられたそれらは地下に保管され300年間監視し続けるとうい。これだけでも気の遠くなる話だが、さらに「高レベル放射性廃棄物」はなんと100万年間管理をしていくという。我々は100万年後の未来に、恐ろしい廃棄物を託しているのだ。
本書は3月11日の事故後に書き下ろされたものである。「原子力は危険である」という著者の一貫した訴えが書かれている。
月
29
8月
2011
世界遺産 縄文遺跡 編著:小林達雄(同成社)
津軽海峡をはさんで向かい合う北海道と北東北。
「森の恵み」、「海の恵み」、満ち満ちていた豊富な自然の中で生きていた縄文人をうかがい知ることのできる遺跡や出土品がたくさんある。
本著の前半は小林達雄先生が「多種多様な縄文」について論じている。後半では、世界文化遺産登録を目指す、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」と呼ばれる15遺跡と、特に貴重な4遺跡を紹介している。各遺跡を写真付きの解説は報告書に比べてとても分かりやすい。
木
27
1月
2011
アル・ゴア 訳:末廣淳子(ランダムハウス講談社)
本書は、2006年にアメリカで公開され話題となったドキュメンタリー映画『不都合な真実』の書籍版である。
元米国副大統領であるアル・ゴア氏の地球温暖化問題に関する講演活動を基に、様々なデータ、写真、そしてゴア氏が環境問題に取り組むにあたった経緯等、ゴア氏の生い立ちを含めた内容となっている。
多くのカラー写真とシンプルなグラフを用いて、温暖化が招いたと考えられる様々な現象を分りやすく、端的に示している。
本書を通して、約30年前の氷河におおわれた台地と、氷河が溶け湖のようになった現在の同じ場所の写真を目にするだけでも、温暖化問題に関して考えるよいきっかけになるのではないだろうか。
金
21
1月
2011
岡田 康博 (編集), NHK三内丸山プロジェクト (編集)(日本放送出版協会)
本書は現・青森県教育庁文化財保護課長の岡田康博氏とNHK三内丸山プロジェクトによる編で、縄文時代の遺跡である三内丸山遺跡を、当時の人々の生活と社会を復元することを念頭に置き、様々な分野の研究者が多角的に分析を行った調査研究をまとめたものである。また、研究成果のみではなく遺跡を支えた市民の活動を綴っている。
単行本: 217ページ /出版社: 日本放送出版協会 (2005/10) /発売日: 2005/10
土
15
1月
2011
岡本太郎という思想 著者:赤坂 憲雄(講談社)
戦後間もなく、ふと立ち寄って東京国立博物館に展示されていた縄文時代の「火焔型土器」の素晴らしさに衝撃を受けたエピソードは有名だが、奔放な躍動感、無限の回帰、アシンメトリー、破調、ダイナミズムという縄文土器に施されや隆線紋こそが「縄文の美学の象徴」だとし、日本美術史の始まりを「縄文」と位置付けるきっかけを作った岡本太郎。芸術家としての作品の表現力だけではなく、彼の言葉や考えに力があったからだろう。
『岡本太郎から見た日本』の続編になる本著は、は日本の偉大なる芸術家、岡本太郎自身を生前の著作や対談などの彼の「作品」、「言葉」や「思想」から読み解いていく。
月
10
1月
2011
発掘された日本列島2010新発見考古速報 文化庁編
江戸東京博物館を皮切りに全国巡回し、毎年開催されている文化庁主催「発掘された日本列島」展の2010年版公式図録である。毎年日本では旧石器から近代までの多くの発掘調査が行われており、その成果にまとめて接する事の出来る唯一の展示会である。
本年度は全国20の遺跡から出土した約450点の出土品の展示を行い、表紙にも掲載されている土偶は、奈良観音寺本馬遺跡出土の縄文時代晩期(約3000年前)の土偶で、とてもユーモラスな表情である。
各地の発掘最新成果をカラー図版満載で、とても情報量の多い図録である。
全80ページ /朝日新聞出版
木
06
1月
2011
北の縄文人の祭儀場 キウス周堤墓群
著:大谷 敏三(新泉社)
北海道新千歳空港に近い石狩低地帯南部の広葉樹林のなかに、縄文時代後期に大規模な土木工事によってつくられた墓地である「キウス周堤墓群」があります。
これまで、縄文時代には大規模な土木工事は出来ないと考えられてきましたが、縄文時代後期の墓制や社会の在り方を示す遺構として注目されています。
本書は北海道の周堤墓の発見の歴史、そしてその成り立ちから衰退までを北東北の環状列石との関連を交えて、出土品などと共に紹介します。
木
23
12月
2010
日月神示 宇宙縄文神とのまじわり 著:中矢 伸一(ヒカルランド)
昭和19年、麻賀多神社において岡本天明の下におりた天からの啓示が日月神示である。 原文は、数字や記号がほとんどで抽象的なものらしいが、優れた霊能者たちによって解読され、命をかけて伝達されてきたという。
その内容は、人々が真に幸福になるための生き方や病気の治し方、世界的大変動のメッセージなど、神道系の預言 書で、現代、そのメッセージをつなぐ日月神示の先導者が著者の中矢伸一氏である。
「日月神示は日本を越えて、世界中の人に知らせるべき重要メッセージ」と今回のゲスト英国スピリチュアリストのキース・ビーハンも言っている。
日月神示に何度も出てくる啓示は『我々の御霊を磨くこと』、それにより万有和楽の理想的な世界、ミロクの世が顕現するということだ。中矢氏は古事記や日本書記をひもとき、神道について詳しく説明をしている。
しかし日月神示をつきつめていくと、神道のさらに奥にある原初的神道につながり、結果的には縄文人の精神性、神と共存していた「縄文神道」に行きつくという。ということは、私たちのDNAに受け継がれている縄文の魂を開花させることができれば、日本はもとより世界中の人々が、ミロクの世の住人になれるということだ。
日本人の精神性の高さはやはり縄文から繋がっていたものなのだと思うと誇らしげに思えてくる。全て読み終わったとき、散漫していた考えが一本の糸で繋がったような、とてもすっきりした感覚をおぼえた。中矢氏が完訳した日本神示も、ぜひ拝読したい。 (落合)
水
22
12月
2010
国宝土偶「縄文ビーナス」の誕生 棚畑遺跡
著:鵜飼幸雄(新泉社)
1986年に棚畑遺跡で発見された土偶「縄文ビーナス」は、縄文時代の文化財として初の国宝となり、いま、多くの人びとに縄文を代表する土偶として親しまれています。
壊すことを前提に作られているとされる縄文の土偶は、その多くが壊れた状態で出土しています。しかし、高さ27センチと大型で、完全な形で発見されたこの「縄文ビーナス」は、私たちに「何のために作られ、また、なぜ壊されることなく埋められていたのか?」という大きな疑問を投げかけています。この問いに対しては現在、様々な解釈がおこなわれていますが、本書では、棚畑遺跡を含む八ヶ岳西南麓の遺跡群についての詳しい解説と、黒曜石の流通という視点から、この「縄文ビーナス」の謎に迫っています。
これまで、三度の海外展で海を渡った「縄文ビーナス」は、昨年の大英博物館での「土偶展」へも展示され、世界の人びとに日本の縄文文化をアピールしました。本書は、国内外を問わず現在注目を集める「縄文ビーナス」について、様々な背景を踏まえて詳しく学ぶことができ、多くの写真や図とともに気軽に楽しむことの出来る一冊です。 (八島)
火
21
12月
2010
考古学の基礎知識 編著:広瀬和雄 (角川選書)
冒頭で日本考古学の現在に触れ、地中から発掘される遺跡や遺物から当時の人々の思い、暮らしや信仰を復元する難しさや方法などが解説されている。人間とはなにか、社会とはなにかを、時間の流れを通して解明するのが考古学の役割とし、特に文字のない時代については考古学を通してのみそれらを知ることができる重要なツールである。
考古学とは何か?考古学の目的や役割、重要性を改めて再認識させられる。
本書はそこから旧石器時代から平安時代までの最新の研究成果に基づく基本的な解説や、方法と論点を提示している。「基礎知識」という本のタイトル通り、本書全体を通して分かりやすく、基礎的なワード類が幅広く集まっており様々な用語をわかりやすく解説。キーワードでの索引もでき、導入編としてとても勉強になる一冊である。(根)